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第37話 戻らない

Author: 柳 雪音
last update publish date: 2026-06-25 06:36:36

地下駐車場に沈黙が落ちる。

冷たい蛍光灯の光がコンクリートの床を照らしていた。

佐伯は黒い封筒を指先で軽く叩く。

「……どうなんだ?」

神崎怜は封筒を見つめたまま、静かに答えた。

「そうだ」

あまりにも静かな声だった。

「一条凛は、オレが撃たせた」

換気扇の低い音だけが響いた。

「本当だったのか……なぜ?」

怜はしばらく黙っていた。そして短く答える。

「守るためだ」

佐伯が眉をひそめる。

「は?」

怜は続けた。

「黒蛇会が動いていた」

「それは知っている」

「狙いは一条凛だった」

地下駐車場の空気がわずかに張り詰める。

「だから撃った?」

佐伯は呆れたように笑った。

「正気の沙汰じゃない」

怜は否定しなかった。

「……そうかもな」

短い返事だった。

その横顔に迷いはない。

佐伯はため息を吐いた。

「他に方法はなかったのか」

怜は答えない。代わりに視線を落とした。

「少なくとも、あの時のオレには思いつかなかった」

それが後悔なのか、諦めなのか。

佐伯には分からなかった。

「一条凛が知ったらどう思う」

その言葉に怜の表情は動かない。

「知ったところで何か違うのか」

「……何だって?」

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